店主は、数年前に発行された“菓子工業新聞”の<見直し菓子の路>【その店の顔、朝生菓子】と題する『富留屋社長』古谷富雄さんのお書きになった文を、新聞の色が黄色く変色した今も包装台横の壁に貼ってあります。
昨今の食品に関する数々の不祥事などを、数年前から予感・憂慮なさっておられた様な文章を私も時々読み返しては心新たにしています。
ここに一部抜粋してご紹介したいと思います。
朝生菓子は番茶菓子とも云われ、一番茶の香りと同じで出来立ての新鮮さを売り物としなければなりません。日持ちする菓子はある程度の言い訳はできますが、今日一日の命である朝生菓子は誤魔化しなんか出来ない繊細なものです。
しかし、最近はお客様の気持ちも解らなくなってしまったのか日持ちすることを最優先かしているようです。売る事を中心に考え何日でも置けるようにした結果、不自然な色や形になっている菓子が見られます。全てが悪い事だとは云えませんがいったいどのようにして作っているのでしょうか?
本来、その日限りの命であるはずの朝生菓子が何日たっても味も形も変わらない。おかしいと思いますがいかがでしょうか。菓子は全て生き物です。時代は変わっても私達が先輩に教えられた技術にはうそがありません。この伝統を忠実に受け継いでいるからこそ今日まで変わる事無く菓子を作る事が出来たはずです。
けれども残念な事に「売る」「金になる」ことのみに走り、菓子創り人本来の姿勢が別の方向に進んでしまっています。朝生菓子一つを挙げてもこの様な状態ですので、これからの後継者に残させるものは何も無くなってしまうのでは、と心配しています。
もう一度昔に戻り「本日は売り切れました。また明日のご来店をお待ちしております」という看板が掛けられる様な菓子作りをして欲しいと云う事です。本物の菓子が失われる事を惜しむ心が強いから・・・
本物の朝生菓子作りをして下さい「菓子は生き物」「食べて無くなる芸術品」が実感でき「自分で苦労して作った菓子は我が子と同じである」というような愛着が湧いてくるまで辛抱強く頑張って行こうではありませんか。
当店では店先に並ぶのは朝生菓子だけで「日持ちしないが?」「日持ちするものないが?」とか聞かれる事が最近多くなってきました。。
朝作って、午前中に売り切れると『もっと作ればよかったのに』夕方売れ残ってかたくなる菓子を見ると『せめて2〜3日日持ちすれば』と思う事がありますが、古谷さんの書かれた「菓子は生き物」の思いが昔から朝生菓子を作る者の本道!「本物の菓子が失われる事を惜しむ心」は忘れてはいけない心だと思っています。
口にこそ出しませんが“座右の銘”の様に貼っているのを見ると店主の思いも同じかと・・・
朝生菓子が日持ちしないのが当たり前と思ってるお客様が少なくなったって私にあたるのやめて!!