OKAMIのぼやき

 

三代目の饅頭屋に嫁いで30数年、この中で結ばせて頂いた数々のご縁・・・
商売とはまるで縁のない家庭に育ち一つずつ教えられ今日が在る。
でも・・・これは?と云う思いがぼやきとなる。

『 五 色 生 菓 子 の 伝 承・・・ 』

金沢の祝い事に欠かせぬものが〔五色生菓子〕です。
        栞  五色 

昔、茶人が自分の耕作米の初物を使用して「日・月・山・海・里」に因んだ菓子を調製、これを藩主前田侯に献納した処非常に喜ばれ毎年献納される事となった。     
 慶長五年、時の将軍秀忠公の息女が前田利常公に輿入れされるのを機に、藩免許の菓子屋堅田吉蔵氏に調製を命ぜられた。
其の后、吉蔵氏は菓子の容器・趣向・味わいに一層の工夫をこらし、武家、町人の別なく店舗でも販売した。
   
 今日、一般祝儀用として使われている五色生菓子は五種の伝承そのままに伝えた銘菓で、日・月は万物の恩沢に浴せぬものなく、山は山の幸で衣食住欠く事の出来ぬ自然の恩恵を受け、海は海の幸で塩・魚類等生存上欠く事の出来ぬ慈恵を受け、里は五穀の生ずる所で大自然に感謝する事となる。。

  日・・・太陽をかたどり、円形の餅に紅色粉を付け日の出を表す。
  月・・・白い饅頭は月を表す。
  山・・・黄色く染めた餅米粒を付け山を象徴する“いがら餅(エガラ餅)”とも云う。
  海・・・菱形の餅は海頭の波を表し“ササラ”とも云う。  
  里・・・蒸し羊羹は村里を表す。
       〔山を蒸し羊羹(茶色い山)・里をいがら餅(黄色い稲穂)との説もある〕  
 
 五色生菓子の使われる祝い事は数多くあります。〈婚礼〉〈初産帰り〉〈建前〉〈開店祝い〉
五色生菓子か紅白饅頭と云われて、昔は当然のように生菓子が用いられましたがいつの頃からか1〜2日日持ちする饅頭となり、それも省略される様になりました。
婚礼の後、村中の家に配ると云われて車が沈むくらいの五色生菓子を配達したのも遠い昔の夢物語・・・婚礼や建前があると近隣の人達に知らせる事となった“セイロ”も飾らなくなって久しい・・・
 
《金沢生菓子専門店会が昭和48年6月に発行した“和菓子の栞”の中での、金沢の一般的な婚礼に関する事柄をご紹介します》
 
 【袂酒】(たもとざけ)
   婚約が成立した時点で袂酒をする。これは一生酒とも云って仲人が持参し、盃を交わしながら結納の日取りなどを取り決める。
 【結納】
   結納の日、相手方に届けた結納品一式に添え一升一重の鏡餅を持参します。これを一生餅と呼び一生幸せが続く様にと餅に
   願いを託したのがはじまりです。結納の祝い膳に五色生菓子を添える。
 【嫁入り道具】
   花嫁道具と一緒に神様への土産物として一生餅を持参します(一升一重の鏡餅)。加えて赤飯・五色生菓子セイロを持って行
   く。また道具持ちの人達に御馳走をして五色生菓子を添える。
 【結婚式】
   結婚式の当日、花嫁を見に来られた人々に紅白饅頭又は五色生菓子を出します。家の人々は赤飯で晴れの門出を祝い花嫁
   を送り出す。披露宴に出席された方々の祝い膳に五色生菓子・赤飯を添える。
 【御部屋見舞い】
   結婚式の翌日、花嫁を訪ねる御部屋見舞いと云う習慣があり、その際花嫁が持って来た輪島塗の重箱に五色生菓子を入れ
   “ふくさ”を掛けて親戚やご近所の方々に配る。(簡素化され箱入りの時もある)数は偶数で18・20個が一般的。
 【里帰り】
   結婚後、新婦が初めて実家に帰る儀式の事を云う。以前は婚礼後3日又は5日目に帰ったが御礼回りの後に里帰りをする
   様になった。その際実家へのお土産として五色生菓子を持参し、届けられた生菓子は嫁方の親戚・近隣・知人などに分贈す
   る。
 【ちょうはい帰り】
   嫁が里帰りを終えて婚家に戻る事。その際里方から五色生菓子を土産に持たせ嫁ぎ先の親戚・近隣・知人に分贈します。
   新しく夫婦として末長くお世話になる大切な方々への、五色生菓子を添えてのご挨拶回りは心ゆかしい良き風習と云える。 
 【お祝い返し】
   結婚のお祝いを頂いたお返しとして五色生菓子又は紅白饅頭を差し上げます。数は偶数がたてまえです。

 今から35年も前に出された栞で、現在の婚礼事情とはかけ離れた感がありますが、これでももっと昔の婚礼よりは簡素化された様に書いてありました。こんなにたびたび頂く生菓子を昔の人達は焼いたり蒸し直したりと無駄なく食べていた様です。(一家族の人数も多かった)
思えば、これだけ世間の人々に結婚をお披露目するとちょっとやそっとの事ではお互い我慢するしかなかった様ですね。。 ミニ五色

 五色生菓子が現在の暮らしの中で少しずつ敬遠されてゆく今「五色すべて食べたいけど1〜2個しか食べれん!」と云う声を聞き、前々から『1個を小さくして、五色全部を一人で食べられる様にしたら!?』との思いがあった。
幸いにも先日知人から、店の二周年祝いに“ミニ五色生菓子”としてお客様に配りたいとの注文を頂き実現することが出来ました!!   
思いの外手間は掛かりましたが喜んでいただけたのではないかと思っています。店主は渋い顔をしていますが、まとまった注文であればこれからもお受けしたいと思っています。いずれは店売りも・・・

 食べて美味しい創作菓子は次々と生まれるけど、暮らしの中に根付く菓子を考えた先人は偉かったとつくづく思うこの頃です。。

  

吉蔵さんの爪の垢でも煎じて飲んだら!?とは云っても残ってないか・・・


2008/5/21

高鼾の店主の寝顔を見ながら私はぼやく・・・

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