三月の声と共に、花束を抱えた人や手に一輪の花を持った人が街を行きかうのが目につきます。
そう、大学や高校・中学・小学校の卒業式が行われる時節で、当店のある小立野台地には金沢美術工芸大学をはじめ高校など数々の学校が所在しているのです。
3月1日の美大の卒業式は毎年、卒業生の有志がその年の話題を風刺した奇抜な仮装で出席して新聞やテレビを賑わしています。
今年の卒業式も期待を裏切らない楽しい式典があげられた様で、式後当店の向かいにある〈飯・酒・音・画・茶店〉では常連の大勢の美大生が、追い出しコンパをした後店の前で記念写真を撮っている姿が春を思わせる陽光の中輝いて見えました。。
美大の卒業と云う事で、当店での忘れられない思い出をご紹介したいと思います・・・
今から十年程前の数年間、美大の教授だった彫刻では名の知られた先生が、毎年卒業式の日ご自分の教室の卒業生に『五色生菓子』をお祝いとして贈っていた事です。
いつも、式後の謝恩会に持参する為受け取りに来られた時の晴れやかな笑顔が、今も目に浮かびます。。
卒業してゆく教え子達へのどんな思いを、この『五色生菓子』に込められたかは分かりませんが、金沢で学んだ生徒達への金沢らしい晴れの日の祝いだったのではないかと思います!
先生への敬愛と共に、卒業の思い出の味として、皆の頭の片隅にでも残されていれば作り手としてこんなに嬉しい事はありません。
中学や小学校の卒業式に贈られる紅白饅頭も、子供達が学校に行っていた頃には毎年たくさんの注文を受けたものです。卒業式に間に合わせる為に夜中から造り、朝早々に学校に届けていました・・・
これが、当店の子供の卒業と重なった時には、忙しい中を式に出席の為バタバタと慌ただしい思いをしたものです。。
「ギリギリまで仕事を!」と言う店主に対し「早よ行くまっし!」と言う姑の口添えがあったからこそ、三人の子供達の義務教育の間の卒業式にはつつがなく出席してこられました。
どの子の時にも、一番感激したのは保育園の卒園式で、泣きながら入園した幼子が、大きな声で返事をして卒業証書を貰っている姿や、『思い出のアルバム』の歌声を聞いていると本当に小さい頃からの事が思い出され涙が止まらないものでした。
私達の卒業式の時定番だった『仰げば尊し』も聞かれる事がなくなっていましたが、最近又幾つかの学校で歌われている様で嬉しいです。。
この仕事をしていて良かったと思える事が幾つかありますが、その一つにいろいろな行事を肌身で感じていられると云う事があり、子供達の卒業・入学の時には赤飯を神棚・仏壇に供え、私達は勿論子供達も神仏への感謝の気持ちが持てた事です。
昔はよく「神さん仏さんだけにでも、お供えを!」と云って卒業・入学には赤飯を買い求められたものだが・・・
あたり前に行なってきた事が次第に忘れ去られてゆくのではと杞憂しているのは、私だけでしょうか!?
人生の卒業式も何時とは知れない歳となったけど、それまで饅頭屋でいけるんかなぁ〜