暦の上でも寒に入り、金沢では雪が降り兼六園の“雪つり”も美しい姿を見せているとの事、また店の前の通りは雪の中静かな佇まいで暮れて行きます。
この時期は店を開けていても生菓子は売れない、売れないから作らない作らないから買いにいらっしゃらないのか例年の様に開店休業状態、それでも搗き直しの餅をお持ち下さるお客様や寒餅の注文を下さるお客様がいらっしゃるのでひっそりと店を開けています。。
成人式も、数日に分散された式典ゆえか過去最少と云われる人数の為か晴れ姿もテレビや新聞で見るだけ、赤飯や饅頭の注文も数件と年々寂しくなってゆきます。
こんな中、親戚でもあり同業者の方が急に入院され生菓子や搗き直しの餅を作るのを頼まれました。作り手に支障が有った時の事を思うと人事とは思えず今後の事を真剣に考える良い機会ではないかと思っております。。
ご主人が当店で修業され結婚して店を持った二人は、奥さんも饅頭・餅・赤飯と一通りは一人で出来る様にとご主人に仕込まれた様です。でも、私が店主と結婚してから「仕事を覚えても、餅を搗く事はせん方がいいよ!餅搗けると思ったら遊びに行って仕事せん様になるし!」と有難い教えを下さった方でもあります。
『今、餅が搗けないと云う事で困っている。』
〔胴づき〕の自動餅搗機があり、それで“えんどう餅”など生菓子を作っている餅屋もあると聞きますが当店で自動餅搗機を使うのは暮れの餅搗きの時だけ、店主が日頃使っている手動の餅搗機は手返しを必要とし杵が振り下ろされる早さに合わせるには相当の修練が必要と思われる。指を潰した人もいると聞くと怖さの方が先に立ちます。。
姑は、店主以上に仕事の出来る人だが餅を搗くのと餡を炊く姿は見た事がない。
私は、マニュアル好きなので教本があれば出来そうな気はするが、職人気質の店主はこれまで覚えた事と自身の勘が頼りでレシピなる物は勿論存在しない!まして匁量りを使っての分量や手分量では何度聞いてもピンとこない。
小さい頃から『饅頭屋』と呼ばれ、自分でも『いずれ後を継がなければ』と思い東京の大学を出ても金沢へUターンして帰って来てくれた息子も、四代目への修業をするには遅過ぎる位だが商売の先行きを考えると「勤めを辞め継いで欲しい」と強くは云えない・・・
姑・店主共々身体も年々辛くなって来て、降り積もった雪を隣近所の前も除けてくれている息子の姿を見るにつけ若者が居ると云う事は素晴らしい!と思っている。。
後継者不足では無く、時代の変化に対応出来ず後継者に託せない商いをしてきた自分達の不甲斐なさを感じています。。
子供の頃から仕事を手伝い、高校卒業と共に朝は父の元で仕込まれながら昼は同業者の処へ見習に行き数年、充分とは云えないまでも餅屋の仕事は分かっていた店主でも舅が秋に亡くなった年、迎えた暮れの餅搗きの時には不安と責任の重さに耐えかねたのか、泊まり込みの男衆が寝ている隣の部屋で姑と餅の売上金の束をお互いに投げ渡し合いながら仕事の譲り合い?をしていたそうだ。。
まぁ今は、たとえそんな状況になったとしても投げ合う程の束は無い!!
色々考えると眠れなくなるのに、寝てすぐ鼾の貴方が羨ましい!