今年も年明け一番に、遠く天草の地より〔ころころ餅〕と〔初誕生の一升餅〕のご注文を頂いた。
このお客様は、四〜五年前から「息子の処に子供が生まれる。」「娘の処に子供が生まれる。」娘さんの友達・親戚の子の出産と〔ころころ餅〕を、一年後には〔初誕生の一升餅〕と贈られる餅を毎年2〜3回ご注文下さる。
当店とどの様なご縁があったのか?金沢でしか使われていない餅をなぜ知っていらっしゃるのか?、ご注文下さる電話では長話も出来ず今日に至っている。
思い当たる事と云えば六年前、熊本で全国菓子博覧会が開催された時に『金沢の暮らし・・・』で当店の〔ころころ餅〕を出品したのをご覧になられたのか、それとも金沢になんらかのご縁のある方なのか!?
金沢生菓子専門店会のシオリによれば、金沢では子供の出産前から初誕生までは数々の祝い事があり、その折々に生菓子・赤飯・餅・饅頭が使われていた様で今でも「しきたりどうりに!」と言われる方もいらっしゃる。
☆ころころ餅・・・・・出産予定日一ヶ月前に造る餅 (詳細は”暮らしを彩る”をご覧下さい)
【昔は、餅の形が盛り上がって腰の高い時は男の子!平たくて腰が低い時は女の子!と
頂いた人達が話すので、私達餅屋の責任は重大だった!】
☆三ッ目の餅・・・・・出産より三日目に鯛の味噌汁に丸餅を入れ、母乳が出る様にと産婦が食べる。又こ
の時出産に際しお世話になった方々に、大きさは決まっていないが白の腰を低くつぶし
た丸餅を贈る。別名〔力餅〕
【昔は、出産後の産婦は母乳が出る様にと親からは餅を食べる様に進められ、お見舞い
に来られる方もおはぎ・えんどう餅を持って来られた。しかし現在は、助産婦さんか
ら乳道がつくまでは乳製品・菓子まして餅などは食べてはいけない筆頭に挙げられて
いる様で、当店の娘に出産後「餅たべる?」と聞いて、「だめなんや!」と言われて
しまった。】
☆七 夜・・・・・初産より七日目に婿・婿の両親を招きご馳走をする。その際赤飯・饅頭・餅をつける。
【現在は退院後、数日してからと云う時もある。】
☆初産 帰り・・・・・出産後三週間から二ヶ月程度の産後を実家で過ごした産婦と乳児が、嫁家先へ戻る
事を『初産帰り』と云い饅頭・五色生菓子・又は紅白餅を持参し、実家からの土産物とし
て親戚・近所に配り初産帰りのご挨拶とする。
☆食べ 初め・・・・・生後百日目に赤ちゃんに初めてご飯を食べさせ健やかな成長を願う『食べ初め』が
あり内輪だけの祝い事とし家族だけで膳を囲み祝い膳には赤飯を添える。
【男児は生後120日・女児は110日とする所もある。】
☆初 誕 生・・・・・生後一年目の初誕生の祝いの時〔一升の丸餅〕を
子供の背に負わせ歩かせたり、おはぎを足元にぶつ
けたりする。
【これはどちらも、子供の足が丈夫になる様に又子供を
遠い土地に離す事にならない様にとの親の愛情を表
した行事と云われている。】
これらの子供の祝い事で餅など配られる数は奇数がもちいられています。
数十年前のシオリなので初産にこだわっている様に思われますが、今は子供の数も少なく祝うならどの子の時にもと思われているようです。
娘が嫁いだ時から、実家は次々と贈答に追われる様で大変です・・・前に読んだ本に前田家の下級武士の行事ごとは妻の実家の援助がないと行えなかったと書いてあったので藩祖の昔から続いていることなのかも。
子供の成長を祈る心は今も昔も変わらないものの、育児は年毎に変わり私達の時に比べ今は年寄りの知恵が通用しない時代になった様な気がして『助言も程々かなぁ〜』とチョット寂しい・・・
成長を祝うかたちも時代と共に変化しているようですね。
本当によく赤飯・餅・饅頭が使われ、夜も寝ないで忙しく仕事してた時もあったのにねぇ〜